2020年4月25日
みなさん――驚いてはいけません。いいえ、驚かなくちゃイケナイの!!!
私ちぢぃーが中学生の時に観て以来愛してやまない日本映画の秀作、「転校生('82)」。
旧ブログでも数度にわたりこの作品への思い入れを熱く語ってきた自分にとって、ずっとずっと探し求めていたクラシックのLPレコードの2枚組が手に入った。そのレコードとは!?
すなわち「転校生 オリジナル・サウンドトラック」。エンドロールに流れるレコード番号をいくら検索にかけても手掛かり一つ得られないまま今日に至っていたのだけれど、ひょんなことからこの「幻のレコード盤」を入手することが出来たのだ。1982年の劇場公開から実に38年、奇しくも大林宣彦監督の逝去の報が伝えられたばかり。「転校生」は俗に言われる大林監督の「尾道三部作」の第一作。撮影開始の目前にスポンサーが降りたために出資が途絶え、苦しい台所事情の中で撮影されたこともあって、劇中音楽も既成のクラシック曲の流用ということになった。これについてはWikipediaなどにも「大林の尾道の実家にあった『クラシック名曲集』LP一枚で済ませた」ということ以外に記載がなく、幅広い年代層にわたって数多く存在するであろう「大林フリーク」が、その実物を持っているというようなネット記事も全くヒットしないのだ。想像するに、まずそれが監督の実家にあったレコードであり、かつクラシックの有名曲をオムニバスにした家庭向けの企画盤ということは、娘である大林千茱萸(ちぐみ)さんへの情操教育の為に買い与えたものか、はたまた監督自身が幼少の頃に聴き親しんだものか(この可能性は低いだろう)。本編にもチラリと登場する千茱萸さんは撮影時にもう18歳だったから、少なくとも10年は遡って、1970年からそれ以前に流通していたものと推定される。つまり(この推論に間違いがなければ)もう50年も前のレコードなのだ。中古市場にも出回らない訳である。本編のBGMとして流れる際には気づかないが、エンディングで「天国と地獄」「タイスの瞑想曲」とメドレーで流れる際にはレコード盤特有のノイズが確認できる。これは、大林映画の冒頭に流れる「A MOVIE」のマークのような8ミリムービー風のレトロ感を印象的に演出する狙いとは違う性質の、単に「このレコード盤が古い古い物である」事を証明するものであろう。
しかし、自身の名声によってより広く愛されるようになった郷里・尾道において、ロケ地を観光地化することを頑なに拒んだ大林氏の芸術的思考を考えるに、サウンドトラックとして使われたレコードをもてはやすような記事を子細に書くことは、監督の意に反するものではないかとも十分に考えられる。よって、あえてここに詳細を記載するのは止めようと思う。
確かだったのは、この音楽は本当に心を揺さぶる、永遠の輝きを放っていたこと。美しい、美しい旋律。取り戻せない青春の日。あの、蝉の声が聞こえてくる暑い夏の日の記憶が蘇るよう。そして、何とも言えない、胸が締め付けられるような切ない思いで心が一杯になり、映画「転校生」の世界にもう一度飛び込んだようなまぶしい感傷に浸ることができたのだ。
映画の中でBGMとして流れるクラシック曲はたった5曲。
●「トロイメライ」
●「アンダンテ・カンタービレ」
(これのみ権利関係の絡みで新緑したもので、ジョー・クァルテット名義)
●「『天国と地獄』序曲」
●「タイスの瞑想曲」
●「G線上のアリア」
まさに至福の音楽。
素晴らしいものを手に入れることが出来て、自分は本当に幸運だと思う。それは「転校生」という愛すべき作品があったからこそなんだ。大林監督、本当に、本当にありがとう。
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